─館外・玄関前─[僅かに開いた隙間を押し開き、外へ出る。湿った風が吹きぬけ、金の髪を揺らした。身に纏った紅の紗が翻る──その色の向こうに見えた、それよりももっと深い、紅]……っ![玄関の、すぐ横。倒れ伏した少年の身体を中心に開く、色鮮やかな、大輪の花]……何故?[口をついたのは、短い言葉。少年の、痩せ細った身体には、はっきりそれとわかる獣の爪痕]まだ、いるという事、ね……。[低い呟きが口をつく。女はしばし少年の亡骸を見つめ、やがて、ひとつ、息を吐く]