─ →井戸 ─
[入口に居る者達に目もくれず、僅かに視線を投げるだけで広間を出た。
右腕を押さえ、俯き加減で廊下を進み、建物の裏へと出るべく台所を目指す。
噴き出て止まらない汗が歩く廊下にぽたぽたと雫を落としていった。
台所へと入り、通用口を抜けて、井戸へ。
水を飲もうと思って来たけれど、井戸の縁に手をかけたところで大きく咳き込んでしまった]
げほっ! ごほごほ!
……─── は、ぁ………。
[ようやく呼吸が落ち着いてきて、それに気が抜けたか井戸に背を預けて地面へと座り込む。
僅かに震え続ける右手を軽く持ち上げて視線を落とすと、は、と息を吐くように、笑った]