[個室に戻ってから、眠りの淵に沈むまでの時間がどれだけのものだったかは、正直、記憶にない。
気づけば意識は落ちて、そして、夢を見た。
教会のピアノを弾くのに慣れ始めた頃。
いつものように、思いつくままに音色を紡いでいたら、物陰から声が聞こえて。
え? と思って、振り返った先には、なにやらバランスを崩してわたわたとしている様子の姉の姿があって。
何してるの、と問いかけたら、なにやら決まり悪そうな様子で、音色に合わせて踊っていた、といわれて、更にきょとん、とした。
──幼い頃の記憶、やさしい色合いの夢。
それは不意に──あかいいろに染まって、砕け散った]