─ 森の川辺 ─
…………。
[ふと、沈んでいた遠き日の出来事から、意識を引き戻す。
思い返すことなど、基本的には、しない。
思い出したくなどはないから。
今だって、無意識に『呪』を放つ、という出来事がなければ振り返る事などしなかった]
……おさえ、ないと。
[己が力を暴走させるのは、本意ではない。
その形で天秤を揺らがせるのでは、意味がないし。
それによって、彼の蝶に頼る事もしたくはない。
落ちてきたばかりで、文字通り右も左もわからなかった頃に、手を引いてくれたもの。
最初の暴走を鎮められてからは、敢えて距離を取ってはいるけれど、慕う気持ちがなくなっているわけではないから。
今のこの状態も、遠くなく察知されるだろう、とは思うけれど。
無為に案じさせたくはない、との思いが抑えなくては、という意思を逸らせる]