─ 朝・大浴場 ─
[まだ誰も起きていないらしく、途中で覗いた広間は無人だった。
くしゃみをこらえ、ビルケを気遣いながらも、できるだけ急いで大浴場へ入る。
脱衣所に入っただけでも、冷えた身体が温ま>>1:20り、ユリアンはほっとした。
熱い湯で手ぬぐいを絞り、先にビルケの四肢を拭う。
それから癖のある毛にブラシをかける。
肩から背中、脇腹、肢。
暖かい空気とブラッシングに安心したのか、ビルケが大きく口を開いてあくびした。
エーファにとって食事の支度が日常の作業であるように、ユリアンにとってはビルケの世話が日常の動作だ。
抜け毛をまとめて丸めながら、思わず笑みがこぼれた。]