[泉の畔、緋い花――揺れる花々の群れの一角に、何も動かない、窪みのような場所があった。 嫌な胸騒ぎと共に、ギルバートはそうっとその場所へと近づく。]………ああ……![彼は、息を飲んだ。 緋い花があかいのは、花弁だけの筈――である筈なのに、その場所に咲く花は茎まで赤と黒に染まっていた。 そして、その窪みの奥には……獣に身体を引き裂かれたピアノの弾き手たる男が、ものひとつ言わずに横たわっていた。]