人狼物語 ─幻夢─

83 血塗れの手


ベルナルト

―二階/タチアナの部屋から―

[扉を閉ざせば血の香りは遮られ、代りに感じる香草の匂い。
 疲弊もあって微睡みそうになるのを、辛うじて堪えた。]

 僕がもし人狼だったなら。
 このまま、彼女を喰らってしまうのかな――。

[ふっと低く零れ落ちた声。
 けれど己の鼻を擽る空気に満ちるさまざまな香は、
 この身に何の飢えをも、渇きをも齎すことは無い。]

  …………。

[それでも、タチアナのショールを畳んで枕元に置いた時、
 露わになって見えた肌を前に、微かに息を零していた。

 やがて男は何も言わずに、彼女の部屋を後にした。
 自室のベッドに倒れ込めば、意識は直ぐに落ちていく。**]

(41) 2013/05/01(Wed) 02:29:42

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