[自宅に散らばる書物の中には、青年が持つには相応しくない物も紛れている。
――少女が望む夢の様な、美しく華やかな夢物語。
――可愛らしい絵柄が全面に押し出された幼い子向けの絵本。
多種に渡る中に、人狼についての物、呪術についての物もある。
研究者の女性、ベアトリーチェに出会った時、話を聞き、連絡先を交換した。
二年間、村には薄情にも手紙を出していなかった癖に、だ。
慣れない敬語に何を彼女が思ったかは知れないが、決して敬語もどきは崩さなかった。
話の流れで、自分の居た村について話す事もあったりもしただろう。
「良い村っスよ。外に慣れると狭く感じるかもしれないんスけど」
村の中ではそんな言葉を形にする事は*決して無い*]