― 1F非常口 ―
[玄関から一番奥の階段の傍に其れはある。
只でさえ薄暗い校舎の中でも一層闇を濃くした空間。
影になった非常口へと向かう佑一郎の足が不意に止まった。
生々しい、けれど嗅いだ覚えのあるにおいが漂っていた。
怪我をした時に嗅いだ其れ。
自らの体内を流れる、血の匂い]
――…え。
[誰か怪我でもしたのか、とそんな考えが過る。
噎せそうになるその匂いは怪我で済ませられるレベルでなく
イヤな予感ばかりが強くなる。
恐れを感じながらも、一歩踏み出しその先を覗いた]
――…ッ、あ……ッ
[非常口の扉に凭れるようにある人影は見覚えのあるシルエット。
ぐったりと動かぬ高峰響の姿を見つけ声を漏らした]