― → テレーズ宅前 ―
[急いた気持ちは足を前に、更に前に。
抱える荷が邪魔に思えて、けれど手放せない。
――『日常』を手放してしまうみたいで]
[目的の建物が見える。
そうして、その前にふたつの人影と、台車]
[膝をつき、随分と低い位置から見上げる視線。
途方に暮れた瞳に置いてけぼりの子供を思わせたのは
その口から零れた言葉の所為もあったのだろうか]
…サリィが、消えた?
テレーズは家に、……。
[いない?と、口には出来なかった。
低く落ちていた視線はゆるりと上がりながら巡り。
…途中で足を止めていなければ、共に来ている筈の彼を]