───── っ!!
[それは直ぐに右目に飛び込んできた。
喉を水平に真っ直ぐ掻き切られ、祈りの象徴を胸に刻まれ空洞を作った女性の骸が床に転がっている。
それがリディヤであることは、瞠目していた瞳が顔の位置に視線を向けたことでようやく知れた]
……『鬼』、だよな。
真紅の薔薇───確か、アナスタシアさんのところにも、あった。
[紅の中に放り込まれた紅。
今はリディヤの胸の上に、弔いのように置かれている。
抜き取られた心臓の代わりのようにも見えた]
ああくそ。
『鬼』、見つけたんじゃなかったのかよ。
[怒りの矛先はジラントへ。
あの後直ぐに向かったものだと思っていたから、また『鬼』の被害が出たことに苛立ちを覚えた。
けれど同時に、オリガじゃなくて良かったと安堵する気持ちも浮かぶ]