─ 客室前→談話室 ─
[勿論後から思い起こせばヒントは沢山あったのだけれど、例えば客足が殆ど無い為に湯を男女に分ける必要が無かったことであるとか、暗黙の了解のようなものになっていた為に誰も取り立てて話に上げなかったことであるとか(後に聞いた者は皆『知ってると思ってた』と答えたという)、その他諸々がフィルターになって気付く事ができなかったらしい。
流れるピアノの音にそんな事を思い起こしながら]
イレーネ、起きてる?
[約束した部屋へ食事を持って行き、ノックをして返事があれば中へ、無ければ部屋の前へ置いておいた。
談話室へ戻り食事を取った後、持ってきた本を少しの間眺めて。
その内の一冊だけを部屋に持ち帰り、残りは図書室へと戻した]