― 屋根の上 ―
[瞳はまだ、魔の金を宿したまま、気配を探るように辺りを見渡す]
誰が、いいかな…?
[ざわりざわりと、血が沸き立つ。感覚は普段よりも研ぎすまされ、視覚から聴覚から嗅覚に至るまで、あらゆる情報が流れ込んでくるのが判る]
レディ・ドミニカと、じっちゃんは…庭に残るのか…だったら…
やっぱりレディ・オリガかな?
[いつの間にか、四肢には金色の爪が伸び、鋭く研ぎすまされた牙が、笑みを刻んだ唇から覗く。紅い髪までもが、長く伸びて風に煽られ、艶めく黒い被毛に覆われたコウモリに似た翼が、その身を包む]
[それは、ヴァンパイアと言うよりは、すでに魔獣の類に近い姿だった]