―― 回想 ――
[差し出された特別仕様の皿は、見目こそあまりよくなかったが、だからこそ嬉しかった。キリルがはじめてなのは知っていたし、これが自分のためだって自惚れないほど鈍くはないから]
美味しいよ。ありがとう。
あぁ、ほんと幸せだなあ……
[ソースの最後の一滴までパンで丁寧に拭って、満足そうなため息をついた。キリルの鹿肉料理にユーリーのワイン。幸せとアルコールにぼんやりしてきた所で自分の半身に感じる彼女の柔らかさと暖かさ]
[皿を脇に寄せ、少し大胆にキリルの肩に腕を回してた。
ほら、支えてあげないといけないからね。
男連中からの視線ともの言いたげな感じはほぼ気がつかない。気づいたところで、酒が照れを飛ばしているからいいんだ、別に]