……………うん。
[呼ばれる自身の名に、少年は小さく返すだけ。
決意を口にして尚、押し隠そうとしても、蘇芳色の瞳は不安げに揺れた。
少女の頭をそっと撫で、触れた髪を梳くように指先を動かして、通り抜けていく。
落ちる涙には明らかに動揺して、手を離し、あたふたと慌て出す]
ゎ、え、と、その、……ごめん、
でも、
違う、レーネは、馬鹿、じゃないよ、
……みんなが――…レーネが、居てくれたから、
決められて、言えた、たんだ。
[眉は下がってしまう。情けない顔をしてしまうのは、今までと変わらない。
それでも。
一歩踏み出した証にと、口に出来なかった思いを言葉にする]
だから、……泣かないで?
[こわごわと、壊れ物に触れようとするよう、顔を覆うイレーネの手へ、フォルカーは指先を伸ばした。叶うなら、その手を握ろうとして]