―朝―
[今日もまた、目覚めてから目許を指で拭った。
ぼんやりと視線が赴いた先、鏡に映る己の姿。
夢の中で綺麗だと撫でられた髪が、くしゃりと乱れていた。
目を伏せ、また何時ものように身支度を整える。]
………イヴァン、
[間接的にとはいえ、己もニキータの死に関わっている。
一瞬でも彼への疑いを抱いてしまったのも事実。
だから言い訳も、下手な慰めも、考えてはいない。
ただ、先日までのニキータに対するイヴァンの姿を見て
漠然と思い抱いていたことがある。]
共に居たのは、彼だったの、かな。
[ナイフを腰のポケットに収めてから、もう一つだけ。
ふたつの人影映す月夜の湖を描いたスケッチブックを
片腕に抱え、廊下へ出る扉をキィと開けた。]