……エリカ。
[小さく、名を呼ぶ。
感情を機械的に制御されている彼女には、痛みの理由を表す術がないのだと。
零れた赤い滴が、物語るかのようで]
……。
[人であれば、自分の事だけ考えればいい、とも言える。
しかし、それを赦されぬ彼女に、最優先される立場の自分がその言葉を向ける事はできず。
言葉の代わりに椅子から立ってその傍らに向かい、ぽんぽん、となだめるように頭を軽く撫でた]
……私は、さっきの部屋に戻ります。
ああ、一人でも大丈夫ですよ。
あなたは、ここにいて……いや、ここにいなさい。
[いいですね? と念を押し。
頭を撫でた事へ何事か言われる前に、部屋を出た]