[昨日と変わらず、二階の空気は生臭い。
否、昨日よりも更に濃い色にさえ思われた。
自室より少し離れた、昨日よりも近い処から伝う
鉄錆に似た匂いに、胸がとくりと鳴っていた。]
まさか、……
[その匂いの元は、訪ねようとしていた人の部屋の前。
息を呑み――扉に手を掛け、開け放つ。]
――――…、イヴァン。
[あかいいろ。動くことなくそこにあるもの。
スケッチブックが、ぱさりと床に落ちる。
男はその場に膝を突き、ただひたすら茫然として
その場の惨状を、言葉も無く見詰めていた。**]