―西エリア―
殺すだけなら……?
そっか、そうだよな。
ここに居るのは、みんなそっち側の……『本物』……
[ずぶ、と足が泥にめり込む感覚があった。
慌てて『力』を送り支えようとするが、消耗により更に意識は混濁した]
何が……?
[鎖を引かれ重心を右前に持って行かれながら、霞む瞳で懐かしい風景を見た。
足の下には耕したばかりの土、周囲には笑顔の兄弟姉妹たち、そして――]
ち、違う、違う――! ここはオラの村なんかじゃねえ!
[重たい槌など放り捨てて駆け出したくなる気持ちを、必死で振り払った。
二重映しの世界の中、相手が居ると思しき方向へ、こちらからも足を踏み出す。
あと一歩で届くと思ったその時、再び急激に世界が歪み始めた。
右腕に掛かる負荷が変化したのも、それと同時か]