[嘘を吐くのも隠し事をするのも元来得意ではなく
どちらかといえば苦手な部類で――。
重い息を吐き出しクレメンスの眠る部屋を出る。
彼を埋めようとした男が其の部屋に来ることは無く
それを少しだけ訝しく思いながらもその行為を是とせぬ女は
隻眼の彼を呼びにゆこうとは思わなかった。
隣にあるライヒアルトの部屋の前に行き控えめにノックをして]
ラーイ、着替えは終わった?
[問い掛ける声に返事はあったか。
入口に、と言っていたから少しだけ躊躇いながらも扉に手を掛けた。
抵抗なく開く扉の向こう――足元には畳まれた衣服がある。
手を伸ばし其れを拾い上げると頭痛を堪えるようにある弟の姿。
心配そうな眼差しをライヒアルトに向けて]
――…大丈夫?
ゼルギウスさんを呼んで来た方がいいかしら。
[尋ねるような声を掛け階下へ向かおうとした**]