[アーベルが何か疑問を覚えたとして、今の男は答える心算が無い様だった。はぐらかすような言葉を選ぶ。夜、部屋に戻るのは早かった。ちゃんと寝てない分疲れた、と。そう言って、先に戻り。持ち込んだ本を開いた。明かりは漏れていただろうけれど、気にしない。誰か来るなら来るで別に問題もなかった。手書きの文字が続く。誰かの日記のようなもの。一番近い日付、後ろのページには、男自身の手で文字が付け加えられている。一年と少し前。『アイツが死んだ』]