─ 回想・前日 ─
[食堂に入り、用意された席につく。
先に席についていた面々に笑みと会釈を向けたところで、ふと一人の男性に視線が止まる。
>>1:82返された笑みはどこかで見覚えがあるようなと記憶を辿り、以前自分の店の顧客から紹介された画家だと気付いた。
彼の描く風景画にいたく感銘を受けたのだと熱く語られ、その時拝見した風景画のイメージでドレスを作ってほしいという依頼も受けて。
ドレス自体はマーメイドラインのシンプルなデザインにしたものの、碧から翠へと変わる繊細な色合いを出す為の染色に苦労したから覚えているが、彼にとってはたった一度会った相手だから記憶に残っていないかもしれない。
だから、ではないがこちらから声はかけることなく。
聞こえる会話にも、笑みを零しはするものの口は挟まなかった。
食事を終えて、食後のお茶を頂いて解散の空気になると自分も席を立ちネリーに声をかけ]
お仕事増やしてしまって悪かったわね、ご馳走様。
料理長にも美味しかったとお礼を伝えておいて下さる?