―回想・昨夜―
[運ばれてゆく遺体をナターシャの近くで見送った。
手伝おうと申し出るような空気でもなく、ただ見ていただけ。
兄は一度そちらについていっただろうか。
鈍い音に振り返れば、仰向けに倒れている青年>>26に這って近づこうとしている女性の姿>>41があった]
……先輩!
[反応するのに少し間が空いた。
その間に作家は辿り着き、震える手で彼の右腕を押さえている。
見る見る間にその袖も深緋に染まっていった]
これはちゃんと治療しないと。
なあ、アヤメさん!
[必死に止血しようとする女性には聞こえていないようだった。
誰の声が聞こえても反応出来ないほど動転していたのだろうか。
無理に引き剥がす事も出来ず困っていると後ろから兄の声がした]