[男とアルビーネの付き合いは12年も前に遡る。
彼女が家にやってきた時、男はまだ少年だった。
記憶を失い行く当が無い患者を医者である父が保護する事に疑問は無かったから、一緒に住むことも不思議には思わなかった。
ただ不思議だったのは、父が彼女の記憶が戻る努力をしようとしなかったこと。
けれど、それも理由があるからだろうと、何故を問うた事は無い。
血の繋がりも素性も解らないけれど、彼女が両親を悪しく思っていないとは解っていたし、それさえ解っていれば問題無いとも思っていたから。
アルビーネがどう思っているかは知らないが、少なくともハモンド家にとって彼女は紛れもない、家族だ。
問われない限りは口にすることは無いが、男はそう、思っている]