[唇に触れる指。もしも今、この指を噛み切ろうとでもすれば、目の前のこの人間は驚くだろうか。出来もしない、外れた思考に辿り着くのは、呼吸すら侭ならぬこの状況を直視しない為。或いは、傷を癒すその優しく暖かな光が、けれど毒杯の様に思える錯覚を無視する為]………。[去る様子に掛ける言葉は持ち合わせておらず。扉が閉まっても、ただ、その向こうを見ていた]