―早朝―
[義兄の死がよほど堪えていたのかその夜の眠りは深かった。
目覚めるのは常と同じ時間。身支度をして祈りを捧げ――力を行使しようと意識を集中させる。
結果は直ぐに知れた。見出せた時のあの悦びは無い。
けれど昨日見たそれとも何処か違っていた。否な予感がして部屋を出る。
エーファの姿を求めて廊下を歩めば彼女らの部屋に行く途中、異臭を感じて足が止まる。半ば開けられた扉を恐る恐る覗けば其処は噎せ返るような血の匂いに満たされていた]
――…え、
[二つ重なる姿が赤の中にある。エーファとフォルカー。
どちらがどちらか直ぐに知れたのは見極めた後だったからか]
エーファさんが、襲われた……?
フォルカーさん……。
[近しい者を失った悲しみは知れて労わるような控え目な声が
何時からそうしていたのか知れぬ彼女へと向けられる]