[ 玄関ロビーに入り気付いたのは、手入れの行き届いていない埃っぽさと、廃墟になっていたのだと伺わせる空気、そしてそれらが乱された痕だった。 空気に微かに何か別のものが混ざっているような錯覚はしたが、現時点では窺い知れないだろう。 無意識に唇を湿らせ、ロビーから奥へと向かう。 扉は後ろで自然閉まったが、音は大きくは響かなかった。 やがて、広間に続く大きな扉を見つけると、今度は先程よりも確りと拳を作り、ノックをした。]