―回想・昨夜―
[飛び出してゆくクロエを追いかけるフーゴーの後に続くこともできなかった。
ユリアンから寄越された声に応じることもできなかった。
立ち尽くすゲルダに声を掛けることもできなかった。
戻ってきたクロエの視線を受け止めることもできなかった。
世界が紗に包まれているかのような倦怠感だけがその時の全てだった]
…っそ。
[かなりの時間が経ってからようやく身体を起こした。
酒場の片隅には横になったヴィリーと、隣で座り込み眠っているらしきゲルダ。
そして椅子に座ったままのライヒアルトが居た]
ライヒアルトさんも残ってたのか。
…怖くはねえの?
[起きていれば問いかける。
答えが返れば曖昧な笑みを浮かべ。
それよりも心配が勝つのだと聞けば下を向いただろう]