[そこはあの夜、歌い手が態々「ここで歌いたい」と指定した場所だった。
白い雪の上に無造作に転がる「もの」……]
一体なに………っ!?
[ある程度近づけばわかってしまう、雪の上に広がる赤に。かすかなその臭いに。
まさか、そう思いながらさらに近づいて、そうして]
――……っ
[思わずあげそうになった声を飲み込む。胃の中から上がってくる物を飲み込む。
そこに「あった」のは、無残に腹を裂かれ打ち捨てられた歌い手の亡骸。
どう見ても、人の手で行われたと思えないその惨状に言葉をなくし、ただ唇だけがかすかに震えた]
………時と、場所と
まさか、本当に……?