[外に出て、一つ、深呼吸をする。
村の者には既に話が伝わっているのか、歩く途中に向けられる視線には様々な色が伺えた]
……そういえばねぇ、覚えてる?
むかーし、森で見つけた、ちっちゃな木苺の木。
今じゃ、すごい茂みになってるんだよ。
[その視線から感じる非日常を振り切るように口にするのは、昨日話そうと思っていた10年前とのささやかな違いの話]
昔の遊び場、結構残ってるんだよね。
ぼくも、4年前に帰ってきて、びっくりしたなぁ。
[そんな、他愛ないといえば他愛ない事を話しつつ。
けれど、島を離れていた間の事は口にはしない。
話せる事がないわけではない、けれど。
話したくない事の方が多いのも事実だから]