[ やがて、ヴィクトールは鍋に水を汲んで来る。
甕もあるはあるが、今はそれで事足りるだろうとの判断だった。
イヴァンが料理を手伝い始めれば、果物や焼き菓子を見つけてきて、焼き菓子の分は包丁で切り分けて皿に盛った。
後で彼らが摘めるようにと考えての行動だった。
左手で扱った包丁を片付け、]
魚を釣ってきたのは君かい?
タチアナと、それと僕が料理を楽しみにしてるよ。
[ イヴァンに微笑み、フィグネリアにも会釈して厨房を後にする。
だが、直ぐに一度厨房に引き返すこととなった。]
すまないが、
広間にあったナイフは誰か回収したかい?
僕の分ごとなくなっているようだ。
[ 広間に一度戻ったところ、机の上にナイフが一本も置かれていなかった。
それを見たヴィクトールの心情は、重圧が薄まり拍子抜けした代わりに、誰かが殺る気になっているのではとアレクセイの無事が気がかりとなった。]