―昨夜/広間→自室―
[血肉を求める衝動は、残り香ならばどうにか抑えておけた。
けれど実際に目の前で多く流されたらどうなるか、かなり不安だった。そういう意味でも分の悪い賭けをしようとしてると、自分でも思う。人間と人狼と、どちらかを滅ぼさずに終わった事例など、見た覚えがないのに]
うん。ありがとう。
休める時に休んでおかないとね。
[もう休むというナータを送りながら、自分も部屋まで戻った。
触れる機会を逸してしまっていた飴色を、ケースから取り出す。
普段弾く讃美歌の類はもう弾けなくて。暫く悩んでから弓を弦の上に置いた]
―Himmelsgewölbe―
[孤児院にある壊れかけのオルゴールから覚えた、少し哀しげな曲。聞き取れなかった一部は想像で補って。
一節分だけ、何もかも忘れようとするかのように弾いた]