― 翌朝:自住居 ―[老婆の悲鳴もなんのその、男は今日もぐっすり眠っていた。大きめのバッグに、衣類は詰め込まれている。本は一冊も、其処に入っていなかった。アーベルに貸した人狼の伝承の本には、極一般的に知られている事実が記入されている。身体能力の事、治癒力の事。銀に対する反応。生者、死者を見定める者の事。狼のイラストの描いてあるページに、栞の様な細長い紙が一枚挟まっている。其処には二年前、村を出た後の日付が、ウェンデルの字で*書かれていた*]