[宿の前まで来て、ふと足を止める。
目に入るのは、立ち尽くす影]
……フランツ……か?
[それがもう一人の幼馴染と気がつくのと、向こうがこちらに気づくのは、ほぼ同時か。
夜闇に紛れたその表情は見てとれず。
それ故にその心情は伺い知れず――言葉を制する事は、叶わなかった]
……なんで……どうして、傍にいてやらなかったんだよ!
俺は……お前なら、って……!
[無意識、叩きつけた言葉は幼馴染に何を思わせたか。
意を捉えたのであれば、驚きはあったかも知れないが。
ともあれ、彼が名を呼ぶ声に多少の冷静さが戻り。ため息が零れた]
……すまん。
アーベルは、中、かな。
とりあえず、今は、そっとしとくか……慰められて、素直に喜ぶヤツでもなし……。