─ 翌朝 ─
[その日は一日、母の傍について過ごし。
数日分の着替えとスケッチブックに画材を持って家を出たのは翌朝の事。
余り早くに押しかけても迷惑か、とは思ったのだが、人通りが増えてから移動するのは何となく嫌で、早目の時間を選んでいた]
……はぁ。滅入るわぁ。
こんな時間に歩くとか、もう二度とないと思ってたのにぃ。
[そんな愚痴めいた呟きを漏らしつつ、通りを抜けて。
広場に差し掛かった時──不意に、視界が霞んだ]
……っ!? やだ、こんな時に……!
[いつになく強い霞は眩暈も伴い、しばし、近くの建物に寄りかかって鎮まるのを待つ。
只ならぬ様子に、白猫が案ずるように鳴いた]
ん……へーき、クラニア……。
[それに短く返して顔を上げて。そこで、視界の異変に気づいた]