─ 宿屋・自室 ─
[部屋に落ち着くと、壊れた腕輪の包みを出して開き、明り取りの近くにそっと広げる]
……鳳の方に、傷が入ったか。
直せない範囲じゃない、な。
[二つの玉と枠に施した細工の状態を確かめて小さく呟く。
刻まれた細工は、番の鳥。
二つの玉に刻んだそれを、水晶の珠を挟んで向き合う形に配し、同じく鳥を刻んだ銀の枠に嵌めた物。
父の故郷で、霊鳥と称されるものの意匠。
永きを共にし、護り続けたい、との意志を形にするにはどれがいいか、と考えて選んだのがそれだった]
……まったく。
一人残した挙句に、こんな騒動に巻き込んじまって。
空回りもいい所だろうに……。