[ 影輝に属する竜が郷。
其処は陽にも月にも遠く、近しき場所だ。
淡く周囲を包む闇に浮かぶ大小の光もまた淡く、まるで数多の螢が舞い踊るかの如く、宙を漂う。生まれては消え、現れては還る事を繰り返すさまは、さながら生の縮図であった。しかし闇は影であり、光は生命ではない。
天を目指さず鋭さはなく、地から離れゆくなだらかな傾斜。
その頂点、小高い丘に佇むものがある。
薄闇を一際淡くした茶に近い髪は首よりも低い位置で結ばれ、長く伸びる。
冥闇を一層濃くした漆黒の瞳は左だけが露であり、左は髪の下。特徴のない顔を目元の黒子が印象付ける。照らす光の仄かさも相俟って、眼を伏せた表情は憂いを帯びて見えた。
腰に巻いた紫紺の布は足首までも届く長さ。同色の上着は丈が短く、腹部が覗く。上着の布地は身体にフィットするものでありながら、羽織った黒のショールに遮られて、そのラインの仔細は窺い難い。
風は吹かぬというに、漂う光と闇の合間で、纏った布は揺らめいていた。]