[カチューシャに頑張るなとは言わなかった。
彼女の性格は知っていたから
言うよりもそれとなく気を配ればいいだけの事。
背に掛けられた小さな呟きに飴色の髪が一度上下に揺れて
振り向かぬまま手を掲げて、わかった、と合図を送る。
外へ行けば掲げていた手を下ろし、拳を握る。
触れたぬくもりを思い、留めるような、動き。
男は広場へ向かう前にもう一人の幼馴染の家に寄った。
イヴァンにマクシームの訃報を伝える。
彼もまた信じられぬといった様子だったが
カチューシャの時のほど言葉は選ばず状況を伝え、
走り出した彼を追うように広場へと向かった]