─村の通り─
[村に着くと、エーリがこちらへと向かってくるのが見え。
彼の説明を聞き、ウェンだけでなくゲルダも消えてしまったことを知った。]
ウェンだけじゃなくて、ゲルダ、も。
[彼女と最後に会ったのは、ギュン爺が刈られたと知ったあの時。
木苺を詰めた籠をぎゅ、と胸に抱いて顔を伏せた。
不意に頭に軽い重みを感じて、兄が手を乗せたのだと知り。
顔をあげないままに、兄に小さな声で呟いた。]
…パンのお礼、言いたかったね。
木苺も、ゲルダの分。つんできたのに。
[泣き顔は見せたくなくて、顔はあげられなかった。]