[ぼろぼろと涙を零し、もう手遅れだと解っていても。其れでも尚、娘はクロエの亡骸を揺さぶり続けていた。損なわれた心臓から零れる血が、娘の手指をとめどなく濡らしていく。]
や、だ…ぁ 厭、だよ…
おきて、よ……… クロエ
なん、で…………
[肩を震わせ、血まみれの敷布に涙が落ちて濃い染みを作る。クロエの、眠った様なその貌が苦悶に満ちていなかった事が、娘をそんな想いにさせていた。
すすり泣く声に気が付いた者はそのうち此方に遣ってくるだろうか。涙に濡れた貌を隠す事なく、娘は幼馴染の死を皆に伝えて。騒ぎに気が付いた自衛団の者がクロエの亡骸を連れていくのに対し連れて行かないでと縋るがそれは叶わずに。
部屋には血の跡だけが取り残された。何か想い詰めた表情で娘は、服越しに聖痕を薄くなぞりあげて*]