[握り返される手の感触に口の端が僅かにあがる。
頷くカチューシャと共にロランを捜しに歩き始めたその時
遠く銃声が聞こえた。
深い山の中にある集落にその音が木霊する]
――…ッ、ミハイル、か!?
[銃声で思い浮かぶ彼の名を紡ぎ
男は傍らの彼女へと視線を向ける。
森からではなく、村の方から響いた音。
急いだ方が良いらしいことは分かるが
瘡蓋が出来たばかりの彼女の足へと視線を落とし]
済まない、結局、善処できそうにない。
しっかり掴まってて。
[言い置いてから、いつかのように彼女を抱き上げる。
小柄なカチューシャを抱いて走るのは
男にとってはたやすいこと]