ひとつは、私自身に彼女への疑念があった事。
もうひとつは、それを『確かめる』術が私の手にあった事。
……死を持って、その在り方を見定める術が、ね。
その状況において、もう一つ真偽を確かめるべき、と判じる要素が生じた。
[言葉と共に、深紫は眠る少年へと一時逸れて]
それで何もせずに動かぬ、というのは、ただの逃避だろう?
故に、動いた──結果的には、命を一つ、無為に散らしてしまう事となったがな。
[無為に、と口にする刹那、深紫は僅かな陰りを帯びる。
その陰りは数拍の間の後、迷いなき光に溶けて消え]