─ 自宅 ─
…気落ちしても仕方ないわね。
遅くならない内に届けに行きましょ。
[そういって目を向けるのは、今しがたまで筆を動かしていたキャンバスの中の男性。
かつて自衛団の団長として采配を揮っていたに相応しい威厳と柔和な微笑みを描き写して欲しいと頼まれたのはどれ程前だったか。
いつもならば月単位で時間をかける所だが、出来る限り早く仕上げて欲しいと願われたものだ。
何故そんなに早く欲しいのかは分からないが、望まれているならば少しでも早い方が良いだろう、と。
まだ乾ききっていないキャンバスに仮縁を宛がい、ベニヤで覆ったそれを更に布で覆い包んで湖上の館へと持ち運んでいった**]