―西殿・結界前―
クレメンス様。
[やってきた生命の竜に顔を向けた。
変わりは無いか、という言葉には、悩みながらも頷いて]
そうですね。
中には養父もいるようですし。万一のようなことは起きないと、そう思いますが…。
[エーリッヒに対するのが煮え切らない言い方になるのは、格別の結界などはないとはいえ、東殿の中にまで迷い込んで来ている混沌のカケラの存在が頭の中を過ぎるからで]
そう、ユーディット様は何かご存知でしょうか。
虚竜王様を一番良くご存知なのは、あのか…。
[そこまで言って、今度こそ不自然に言葉が途切れた。
目を何度も瞬き、周囲を見渡す]