[近づく前から分かっていた。部屋に飛び散った、赤い飛沫。昨日、何度も見た――それより色濃く染まった毛布。水に漬けても容易には落ちないだろう。取り払って分かったのは、首に刻まれた深い痕。 それから、足りないものがあること。肩から腕にかけてが食いちぎられている。主から離れた腕は室内にあったけれど、執拗に喰われていた。そこに花が咲いていた痕跡は僅かしか残っておらず、朱より濃厚な赤に紛れて見えない]