[湖の畔に開けた小さな村の教会に赴任したのは六年前。ほぼ全面が凍結する湖を見て感嘆したのを覚えている。随分前に亡くなった母の故郷であると知ったのは、司祭として以前よりこの村にある彼と打ち解けてから。母の家名であるヴァレンシュタインの響きが印象に残っていたらしい。そんな縁もあり、この村に馴染むのにはそう時間も掛からなかった。本格的な冬はもう間近。もう六年になるのかと感慨深く思いながら、小島の館の扉を叩いた。]