[白い手袋は遺体に触れたことで赤が移っていた。
オトフリートの眼差しに、一度目を伏せる。
悩むというよりも覚悟を決めるように息を吐き、
ゆっくりと深緑の双眸を自身の手許へと向けた。
右手の手袋をはぎ取り、袖を軽く捲ってみせるは、蒼き痣。]
――…蒼花。
[どちらにせよ弔いは素手でしようと思っていたから、
色付く手袋は懐にしまい込み、
ギュンターの手を胸元で組ませてから、祈りを捧げる。
歌い手の時よりも、少しだけ時間が掛かったかもしれない。
イヴァンに視線を向けて、
シーツで包みなおすのを手伝って貰い、
ギュンターの遺体を安置する。]