―朝/自室―
[彼の親は大変子煩悩であった。
あの日も、一体いくつの子供だ、自分は平気だと追いやったような気もする。
恵まれていたのだと、思う。甘ったれた事だと自覚はしていた。
だけれど、そういう日常は、夢に見る事もない。
一歩、人との距離を取る。失った時が怖いから。
今日も夢は見なかった。いつもの朝だった。
起きて身支度を整える。隣の部屋のヴィクトールは、もしかしたら起きているだろうか。
覗きにいこうか、と考えて外に出ると、端の方に人の姿が見える。
――鉄のようなにおいがする。
開くときは気にしなかった音を、閉める時は気にした。
それから、二人の姿の方へと歩いていく]
……大丈夫か。
[フィグネリアとタチアナの二人の様子に、まずはそう声をかける。
そのまま室内を覗くと、顔を顰めた]