― 黒珊瑚亭の客室 ―
良くも悪くも、変わらないな…この島は。
[窓からの爽やかな海風のにおいを、胸いっぱいに吸い込む。
子どもの頃は見慣れていた、島ののどかな風景と、
その向こうに広がる碧い海原]
…帰ってきたよ。
[掌の上、紅珊瑚の指輪をぽんと空に放り、
落ちてきたそれを再びぎゅっと握りしめた]
さて、黒珊瑚亭の料理も、変わらない味かな?
[久しぶりの船上では、船酔いを警戒して食事を控え目にしていた。
くぅと鳴った腹をなだめるように、一撫でする。
旅装束から気軽な服に着替え、食堂へ向かおうと扉を開けた]