― 客室→二階廊下 ―
[未だ湿っている毛皮のコートを客室のハンガーに掛けたまま残し、メーフィエは外に出た。
纏っているのは黒い長袖のカットソーに、灰色のフレアースカート。
くるぶしまで届く裾を緩やかに揺らしながら、静かに歩き出した。]
あ、……。
[見えた人影に瞬き、立ち止まった。
黒いワンピース姿のその人>>82は――メーフィエが逃げ続けている相手では無かった。
小さく緩く息を吐き、それからふっと、先程の記憶を思い起こした。]
あの。
貴女も、さっきエントランスで見かけた……雨宿りに来た方?
その……こんばんは。
[少なくともメーフィエの目には女性であるように映ったその人に、幾らか落ち着きを保って声を掛けた。]